日本企業では、社内業務において上長から承認を得るために稟議を行います。日常的に膨大な数の稟議書が飛び交っているという企業も珍しくありません。
しかし、はじめて稟議書のフォーマットを作成するにあたり、「稟議書のメリットがわからない」「稟議書を作成するポイントがわからない」という方も多いでしょう。
そこで、この記事では稟議書のメリット・デメリットやフォーマットの具体例、作成ポイントについてわかりやすく解説します。
稟議・稟議書とは
稟議とは、起案者の権限では決められない事柄において上長からの承認を得ることです。また稟議書とは、稟議の背景や内容などを記載し、上長に提出する書類です。
一般的に、取引先や顧客との契約締結時や備品の購入時、社員の採用時などの場面で稟議書を作成します。
稟議と承認・決裁・起案との違い
稟議によく似たこと言葉に、承認・決裁・起案があります。以下にそれぞれの言葉の違いについてまとめました。
- 承認:稟議の内容に同意すること
- 決裁:稟議の内容について、最終判断を下すこと
- 起案:草案をまとめ、稟議書を作成すること
稟議書を作成するメリット・デメリット
ここでは、稟議書を作成するメリット・デメリットを解説します。稟議書を作成するメリット・デメリットを理解したうえで、デメリットを最小限に抑えるような作成方法を心がけましょう。
メリット
稟議書を作成するメリットを以下にまとめました。
- 関係者に情報共有しやすい
- ムダな会議をなくせる
- 承認者が稟議内容や流れを把握しやすい
- 証拠として残るため、トラブル・ミスの防止につながる
- 問題の発見や改善案が加わり、より洗練された提案になる可能性がある
稟議書は関係者に順番に回覧されるため、一人ひとりが十分に内容を確認できます。そのため稟議の問題や課題を指摘することで、改善につながります。
また関係者全員が稟議内容を確認できるため、スムーズな情報共有が可能です。ムダな会議を行う必要がなくなるため、全員の日程調整や会議室を押さえるなどの手間もなくなります。
デメリット
稟議書を作成するデメリットを以下にまとめました。
- 稟議書の作成に時間と手間がかかる
- 決裁までに時間がかかる
- 責任の所在が曖昧になりやすい
稟議書の作成には、一定の時間や手間がかかります。特に専門的な内容に関する稟議の場合には、より多くの労力も必要です。そのため、本来の業務にかけられる時間が減少してしまいます。
また承認者が一人ずつ確認するため、決裁までに時間がかかりやすいのも大きなデメリットといえるでしょう。対外的な契約に関する稟議の場合には、取引先を待たせることになり、ビジネスチャンスを逃してしまう可能性もあります。
何らかのトラブルが発生した場合、複数の承認者がいることで責任の所在が不明瞭になりやすいことも注意しなければならない点です。コンプライアンス遵守のためにも、稟議の種類や内容によって責任の所在を明確化することが必要です。
【具体例】稟議書の基本的なフォーマット
ここでは、稟議書の基本構成や一般的なフォーマット例について紹介します。
記載する項目
稟議書に記載する基本的な項目を以下にまとめました。
- 作成日・申請日
- 起案番号
- 起案者名
- タイトル・件名
- 稟議内容
- 承認者・決済者からのコメント欄
- 添付書類
この他にも稟議書の内容によっては「起案に至った理由」「発注先」「数量・金額」「支払日」「採用の理由」なども追加することで、フォーマットとして使用しやすくなります。
一般的なフォーマット例
以下に、一般的なフォーマット例を紹介しますので、作成時の参考にしてください。
- 購買稟議書
2024年10月14日
営業部 〇〇 〇〇 起案番号:〇〇
営業部のパソコン導入について
下記の通り、営業部で使用するパソコンの購入について、お伺いいたします。
1. 稟議の背景と目的 新入社員が来月から1名配属されることになりました。営業部にあるパソコンはすべて使用中であるため、新たにパソコンを購入いたします。 2. 購入内容 〇〇社パソコン 〇〇-〇〇(品番) 3. 数量・金額 数量:1台 金額:10万8,000円 4. 支払日 2024年〇〇月〇〇日 5. 条件付き承認/否認の理由
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- 広告出稿に関する稟議書
2024年10月14日
マーケティング部 〇〇 〇〇 起案番号:〇〇
〇〇セールに関する広告出稿について
下記の通り、〇〇セールに関する広告出稿について、お伺いいたします。
1. 稟議の背景と目的 1月から開催される〇〇セールにおける売上拡大に向けて、新商品〇〇シリーズの認知度向上のために大規模な広告出稿を実施いたします。 2. 対象製品 〇〇 △△ ×× 3. 広告出稿予算 110万円 4. 掲載時期・掲載先 掲載時期:2024年〇〇月〇〇日~2024年〇〇月〇〇日 掲載先:Google Ads(ディスプレイ広告、YouTube広告)、各種SNS広告 5. 出稿による成果予測 現在、新商品〇〇シリーズの認知度がターゲット層において20%のところ、1月から開催される〇〇セールまでに約50~60%へと向上する見込みです。 6. 条件付き承認/否認の理由 |
承認される稟議書の作成ポイント
最後に、承認される稟議書を作成するためのポイントを解説します。
わかりやすくシンプルに記載する
一目で内容が分かるようにわかりやすく内容をまとめましょう。
詳しい内容を説明する際には、専門用語や長文、冗長な表現はできるだけ避けてください。箇条書きでまとめた方が見やすい場合や注釈が必要な場合もあります。
「他部署の人でも、内容をすぐに理解できるかどうか」を意識して作成することが大切です。
稟議の背景・リスクも記載する
稟議内容だけでなく稟議に至った背景やリスクも記載することで、稟議に関連する情報を承認者に提供しましょう。
稟議に至った背景は、より稟議の必要性を伝えられる可能性があります。またリスク
においても、上長からの指摘により改善・対策することで稟議内容を成功できる可能性が高まります。
稟議書の作成が大変であっても最低限の内容に留めるのではなく、承認のために必要な情報は記載しましょう。
関連情報を添付する
承認者が同意してくれるように、必要な情報を関連情報として添付しましょう。例えば、「新しい設備を導入することで、生産性が10%高まる」という成果見込みがある場合には、その理由を説明した情報が必要です。
稟議書に直接記載すると長文になってしまう場合だけでなく、契約書、見積書、履歴書なども関連情報に該当します。
ワークフローシステムで作成する
紙ベースで稟議を行っている場合、申請・承認業務を電子化できるワークフローシステムの導入が最もおすすめです。
システム上で稟議書の作成や承認、決裁作業を行えるため、いつでも・どこでも作業可能です。また、現在の進捗状況や過去の稟議の確認も検索機能により簡単に行えるため、稟議にかかる時間や手間を大幅に削減できます。
現在、稟議書をExcelで作成している場合には、Excel書式をそのままワークフローシステムに取り込んで利用できる製品もあります。そのため、電子化への移行による社員へのストレスを極力減らせるでしょう。
またワークフローシステムでは、アクセス権限や承認フローを設定できるため、内部統制や情報セキュリティ対策の強化にもつながります。
稟議書の電子化はワークフローシステムがおすすめ
この記事では、稟議書のメリット・デメリットやフォーマット例、作成ポイントについて解説しました。
稟議書を作成する際は、誰もが一目でわかるような内容になるように意識することが大切です。紙の稟議書を印刷して使っている場合、ワークフローシステムで電子化することで、業務効率化や省人化、ペーパーレス化につながります。
その際、「電子化への抵抗感がある」「長年の慣行を変えるのが億劫」といったお悩みがある企業には、現在のExcel書式をそのまま利用できる「ワークフローEX」の導入がおすすめです。ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。